7月20日オープンキャンパス模擬授業
「悪女」か「悲劇の王妃」か、それとも? ──マリー・アントワネットをめぐるイメージ形成──
ちょっと想像してみてください。AとBというふたつの肖像画があります。いずれも18世紀のヨーロッパで描かれた女性像です。
Aの女性は、豪華なブルーのドレスに身を包み、気品のある自信に満ちた微笑みをこちらに投げかけています。右手を地球儀において世界を掌中に収める姿は、まるで彼女が世界を動かしているかのようで、この女性の「自己中心性」がよく表れています。
いっぽう、Bの天を仰ぐ女性は両腕を縛られて、どうやら囚われの身のようです。しかし、シンプルな純白の衣装のためでしょうか、その白さが逆に無実や無垢といった神々しさ(?)を際立たせています。「つみびと」というよりは、まるで「殉教者」です。
このように、これらの女性像はまったく正反対のようすを捉えていますが、じつは同一人物なのです。この女性、フランス王妃マリー・アントワネットは、その贅沢な宮廷生活ぶりから「悪女」として日本人にもおなじみの歴史的人物ですね。また、フランス革命という時代を背景に、悲壮な最期をとげた「悲劇のヒロイン」としても知られています。このふたつの女性像は、いわばふたつの顔をもつアントワネットがイメージ化された、その端的な例といえます。
2006年に『マリー・アントワネット』というハリウッド映画が公開されました。そこには「悪女」でも「悲劇のヒロイン」でもない、綺麗なドレスや可愛らしいお菓子に囲まれて、うきうきする「普通の女子」が王妃として描かれています。この、従来のイメージを覆すアントワネット像はいったい何なのでしょうか。模擬授業では、いまお見せできないAとBの肖像画のほかに、映像や少女コミック等の比較分析を通して、アントワネットをめぐるイメージ形成の問題について探っていきましょう。
7月21日 オープンキャンパス模擬授業
アニメでまちづくり-コンテンツ・ツーリズムと観光-
「コンテンツ・ツーリズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「コンテンツ・ツーリズム」とは、映画・TVドラマ・小説などのコンテンツを観光振興に役立てようとする新しい観光の仕組みのことを指して言います。つまり、映画や小説、TVドラマや最近ではアニメーションの作中世界に旅行者が身を浸して、作品世界を楽しむ行為全般を「コンテンツ・ツーリズム」と呼びます。
今日、国内観光地の多くが、旅行者(ツーリスト)のニーズの変化に戸惑いながら、変化・変革を志向しています。その一つの方法として、アニメによるまちづくりが各地で取り組まれています。
アニメによるまちづくりの成功事例のひとつとして、埼玉県秩父市の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(あの花)を活用した観光振興が挙げられます。講師は、この取組に当初から関わってきました。
この画像は、『あの花』のキービジュアルのひとつですが、秩父市内に実存する風景があり、このような劇中世界をファンが訪ねる行為として「聖地巡礼」が盛んに行われています。2011年に放映された『あの花』は、この年だけで8万人の誘客と3.2億円の経済効果をもたらしたと試算しています。
ただし、通常、コンテンツ・ツーリズムは、コンテンツ自体の放映終了などにより「オワコン」になると、途端に集客力が落ち込みます。しかしながらあの花の場合、2013年夏の映画公開が早い段階から検討されていました。コンテンツツーリズムの世界では稀有なケースです。
このような内部事情を踏まえ、アニメを活用したまちづくりがどのように行われてきたのか?当事者の視点で、かつ他の地域の取組と比較しながら講義します。
ヲタ、腐った女子、そしてそれ以外の方も来聴ください。