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コラム バンコク雑感その1―「シーロム」駅?「風の色」駅?―

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現代文化学部 福永 昭教授

 バンコクの「新宿」駅と呼ばれる「シーロム」駅に、私は初めて降りました。タイ語で「シー」は「色」、「ロム」は「風」と私の初心者タイ語では読めます。とすると、「シーロム」駅は「風の色」駅となるのでしょうか。風の色という命名に、なかば感動し、タイ人の感情の豊かさに驚きました。それが私のバンコク滞在のはじまりです。

 シーロム駅の周辺には、ビジネス街も、飲食店街も、ショッピングモールもあり、高級感を醸し出していました。独特な趣きのある街でした。

 タイ人の感情の豊かさにおおきな期待を抱いて、私は、何回か、バンコクの大学生さんたちと、日本にもある有名なコーヒーチェーンにて、長い時間、コーヒーを飲みながら、いろいろと話をしました。ところが、すくなくとも私が知り合ったタイ人の学生さんたちは、日本で私が知っている大学生さんよりも、どちらかというと合理的であり、経済観念に長けているように思えました。

 なぜ大学に来たのですか、と聞きますと、タイの学生さんたちは、卒業してからイイ仕事に就くため、高い給料をもらうため、昇進するために、大学に来ました、とほぼ全員が答えます。

 日本の学生さんのように、自由に4年間を過ごしたいからとか、自分が本当にやりたいことが何かじっくり考えたいとか、自分探しの旅に出たいとか、これからどうやって生きていくか考えたいとか、親が大学に行くように言っているとか、友だちも大学に行くからとか、そういう答えは、すくなくとも私はタイでは聞いたことがありません。

 タイの学生さんの方が、現実的だとか、功利的だとか、打算的だとか、成熟していない考え方だとか、言うこともできるかと思います。日本人の学生さんの方が、今の厳しい現実を見ていないとか、楽観的過ぎるとか、自立心がたりないとか、言うこともできます。

 4年とたくさんの授業料を大学に払うかわりに、タイの学生さんは、卒業後は、イイ給料をもらって、それなりの部屋に住み、マイカーを運転し、おいしい食事もできるようになるため、大学に来て勉強していると考えているようです。まず、自分の生活を安定させ、家庭を持つことが先決であり、それから人生を楽しみたいということのようです。

 私が知り合ったタイの学生さんのように、イイ給料をもらうために大学に来たのか、日本のように、いろいろ考えるため大学に来たのか、どちらが正しいというわけではありません。それは、一人一人が考えて、自分はなぜ大学に来たのかを決めるものだと思います。

 今、日本の大学生は就職に苦労しています。タイの大学生さんたちも苦労はしていますが、就職をとりまく状況はタイの方が明るいものです。卒業後はタイで活躍することも、日本の学生さんの選択肢のひとつだと思います。

 ちなみに、「シーロム」は「風の色」ではなくて、「風車」の意味であることを、私はだいぶ後に知りました。シーロムは「風の色」ではありませんでしたが、私の好きな街です。


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