現代文化学部 平井純子准教授
夏、クジラたちは低緯度から高緯度の南極地域にやってくる。餌を求めて。一番よく見られるのがザトウクジラ。大型のヒゲクジラ類で、その重さは30t以上にもなる。
歯をもつハクジラ類が魚やイカなどを餌とするのに対し、ヒゲクジラ類はオキアミなどの動物プランクトンをヒゲフィルターで漉しとって食す。オキアミはヒゲクジラ類だけでなく、南極地域に生息する魚類やイカ類やペンギン類などの餌でもある。これらを食べるハクジラ類やアザラシ類や鳥類も、間接的にはオキアミを食べていることになる。オキアミあっての南極地域の動物たち。
流氷の上で寛いでいたのはヒョウアザラシ。何とも幸せそうな顔をしているが、食えるものは何でも食うという荒くれ者。砂浜からすぐの浅瀬でペンギンを待ち伏せし食らいつき、激しく海面に叩きつけ殺す。そして食う。すぐそばではペンギンたちが何事もなかったように歩いている。これもまた日常。
南極地域では生物の種類は多くはない。しかし個体数は多い。何千、いや何万という数であろうチンストラップペンギンのコロニ―。波打ちぎわではカニクイアザラシやウェッデルアザラシ、ミナミゾウアザラシがゴロゴロと転がっている。信じられないような光景がそこにある。
海を眺めていると海面をピョンピョンと飛んでいく集団をよく目にする。ペンギンだ。陸上でのよちよち歩きからは想像もつかないほど、機敏でしなやかなスイム。すばらしいフォルムにほれぼれ。その向こうではザトウクジラの潮吹き。背景には氷山。南極の海は飽きない。